マレーシア、国家医療DX計画「PERSADA」を始動

2026年6月16日、マレーシア保健省が国家医療デジタル化計画「PERSADA(National Health Digital Ecosystem and Connectivity Driver)」を正式に立ち上げた。総投資額RM6億5,000万(約220億円)を投じて全国の医療機関をデジタル統合するプロジェクトで、段階的に整備を進め2028年の完成を目指す。

正式発表式典には保健大臣Datuk Seri Dr. Dzulkefly Ahmadと通信大臣Datuk Fahmi Fadzilが出席した。


PERSADAで導入される主なシステム

1. クラウド型臨床管理システム(CCMS)

One Individual, One Record(一人一電子カルテ)」の原則に基づき、全国約2,488の公立医療機関(保健所・クリニック等)にクラウドベースのCCMSを導入。どの施設を受診しても、患者の過去データ(投薬履歴・アレルギー・検査結果)を即座に参照できるようになる。

2. 総合病院情報システム(THIS)とEMR整備

Total Hospital Information System(THIS)は全国16病院規模での展開が進められており、AIリアルタイムダッシュボードを搭載している。PERSADAは全体として150の政府病院を対象にEMR(電子カルテ)強化を進める計画だ。

3. 国家医療インターオペラビリティ基盤

国民が自分の医療記録にオンラインでアクセスできる統合基盤。将来的には政府病院と民間病院間の情報連携も見据えており、転院時の書類手配やセカンドオピニオン取得が容易になることが期待される。

4. テレヘルス(MyVAS)と農村部支援

農村・遠隔地向けにマレーシア仮想医療アシスタントシステム(MyVAS)を整備するほか、医薬品のドローン配送導入も検討されており、都市部と地方の医療格差縮小を目指す。

5. デジタル歯科情報システム

全国157の歯科クリニックにDental Information Systemを導入し、治療履歴を一元管理する。


在住日本人への実生活の影響

在住日本人が公立病院を日常的に利用するケースは限られているが、PERSADAの整備によって次のような変化が見込まれる。

緊急時の情報共有: 救急搬送先が変わっても、アレルギーや薬の情報が共有されやすくなる。

待ち時間の短縮: システム化による診察フロー効率化を目標としており、特に政府クリニックの待ち時間が現状より短くなることが期待される。

民間病院との将来的な連携: 今のところ私立病院(在住日本人が主に利用)への接続は計画段階。インターオペラビリティ基盤の整備が進めば、公私の医療情報統合も視野に入る。

当面は、英語対応の私立クリニックや日本語対応医療機関が在住日本人の受診先として引き続き中心となる。


事業規模と背景

項目数値
PERSADA 総投資額RM6億5,000万(フェーズ1: RM7,400万)
対象政府病院(EMR強化)150施設
対象一次医療施設(CCMS)2,488施設
対象歯科クリニック157施設
THISを展開中の病院16施設(2026年6月時点)
整備完了予定2028年
2026年度保健省予算RM46.52億(前年比+2.76%)

マレーシア政府はPERSADAを国家フレームワーク「Agenda Nasional Malaysia Sihat(マレーシア健康国家議題)」の中核に位置づけており、国連SDG 3「すべての人に健康と福祉を」とも方向性が一致している。


参考: HealthTechAsia「Malaysia deploys AI hospital system across 16 facilities in healthcare push」(2026年6月)/ The Capital Post「Malaysia Launches PERSADA Digital Health Initiative」(2026年6月16日)/ NST「New RM650mil system to revolutionise Malaysia's healthcare delivery」(2026年6月)