マレーシア保健省(MOH)は2026年8月27日、今年のデング熱感染者数が第33疫学週(8月22日まで)の時点で6万1,000人を超え、前年同期比60.8%増になったと発表した。ズルキフリ・アフマド保健相はあわせて、日本の製薬会社が開発したデング熱ワクチンについて、国家予防接種プログラム(NIP)への組み入れを視野に費用対効果分析を進めていると明らかにした。
感染者6万人超、増加ペースはむしろ加速
保健省によると、第33疫学週(8月22日)までの全国の感染者数は6万1,000人超、死者は58人。前年同期比の増加率は60.8%に達した。
1週間前の第32疫学週(8月15日まで)時点では、感染者5万8,079人・死者55人・前年同期比56.2%増と報じられており(New Straits Times、8月21日付)、増加率そのものが週を追うごとに上昇していることになる。
保健省は8月21日の声明で、ネッタイシマカ属(Aedes)の蚊の発生源の7割以上が住宅地内で見つかっているとしている。感染拡大は当初セランゴール州・クアラルンプール・プトラジャヤなどクランバレー地域に集中していたが、その後他州にも広がった。保健省は集中対策によりクランバレー地域では改善の兆しが出ているとしつつも、全国的なリスクは依然として高い水準にあるとしている。対応として、デング熱対策の専用オペレーションルームを稼働させ、クアラルンプール・セランゴールなどの多発地域に人員を追加投入したほか、ボルバキア感染蚊を使った生物学的防除の拡大も進めている。
保健省、「日本製ワクチン」の国家接種プログラム入りを検討中
ズルキフリ保健相は、デング熱ワクチンをNIP(国家予防接種プログラム)に組み入れることについて「簡単なことではない。慎重に検討する必要がある」と述べ、現在「日本のデング熱ワクチン」を対象に費用対効果分析を実施中であることを明らかにした。ここで言及されている「日本製ワクチン」は、日本の製薬会社・武田薬品工業が開発した4価デング熱ワクチン「Qdenga(キューデンガ)」を指すとみられる。同ワクチンはすでにマレーシアの国家医薬品規制機関(NPRA)に登録されており、私立の病院・クリニックでは接種を受けられる状態にある。
保健相は、ワクチンの価格がなお高額であることを費用対効果分析の主な論点として挙げた。
在住日本人が今できること
NST(8月21日付)によると、保健省は発熱やデング熱の警告徴候がある場合は速やかに受診するよう呼びかけているほか、住民に対し自宅とその周辺を週に最低10分点検し蚊の発生源をなくすよう求めている。保健省は感染増加の一因として、断続的な降雨のあとに高温が続くという不安定な天候を挙げている(NST 8月21日付)。
保健省が、ネッタイシマカ属(Aedes)の蚊の発生源の7割以上が住宅地内で見つかっているとしている点を踏まえると、植木鉢の受け皿や排水溝など、身近な水たまりをなくすことが引き続き有効な対策となる。
ワクチン接種を希望する場合は、私立の病院・クリニックで有償で接種可能な状態にあるが、適応年齢や接種可否は医師の判断によるため、かかりつけ医への相談が前提となる。NIPへの組み入れが決まるまでには、費用対効果分析などなお時間を要する見通しだ。
参考: New Straits Times(2026年8月21日)、Bernama配信・Healthcare Asia Daily News(2026年8月27日)、Sinar Daily(Qdenga関連背景情報、原記事初出2024年6月)