2026年7月に入り、「TNB(テナガ・ナショナル)の電気代が急に上がった」という声がマレーシア各地で広がっています。原因は、毎月の燃料価格に応じて電気料金を調整する「AFA(Automatic Fuel Adjustment=自動燃料調整費)」の7月分が引き上げられたためです。エアコンを長時間使うコンドミニアム世帯では影響が大きくなる可能性があり、在住日本人にとっても他人事ではありません。この記事では、AFAの仕組みと7月の変更点、家計への影響、対策を、公的発表と現地報道にもとづいて整理します。
AFAとは何か — 毎月変わる「燃料調整費」
AFA(Automatic Fuel Adjustment)は、発電に使う燃料(石炭・天然ガス)の価格や為替の変動を、毎月の電気料金に反映させる仕組みです。マレーシアのエネルギー委員会(Energy Commission、通称ST)が毎月レートを設定し、TNBの請求書に上乗せ(または割引)として表示されます。
- ●燃料価格が基準より高い月は「サーチャージ(上乗せ)」としてプラス表示
- ●燃料価格が基準より安い月は「リベート(割引)」としてマイナス表示
固定ではなく毎月動くため、同じ使用量でも月によって請求額が変わります。
7月のAFAは+3.59セン/kWh — 前月から上昇
エネルギー委員会(ST)が設定した2026年7月分のAFAは +3.59セン/kWh で、6月の +2.59セン/kWh から1セン上がりました。
上昇の背景には、発電燃料の価格が基準値を上回っていることがあります。7月の燃料価格は以下の通りです。
- ●石炭: 122.37 USD/MT(基準価格: 97 USD/MT)
- ●ガス(Tier 2): 75.58 RM/mmBTU(基準価格: 46 RM/mmBTU)
なお、本来のAFAは 5.55セン/kWh に相当しますが、電気産業基金(KWIE)が35%(約2億600万リンギ、1.96セン/kWh相当)を負担して緩和した結果、消費者が支払う分が3.59セン/kWhに抑えられています。
重要ポイント:月600kWh以下なら免除、超えると「全使用量」に加算
家計への影響を左右する最大のポイントが、600kWhの境界線です。
- ●月間使用量が 600kWh以下 の世帯は、AFA・小売料金(retail charge)・8%売上税がいずれも 免除 されます。マレーシアの国内需要家の約85%がこの範囲に収まるとされています。
- ●一方、月間使用量が 600kWhを超える と、AFAは「超過分だけ」ではなく その月の全使用量 に適用されます。
つまり、601kWh使った月は、601kWh全体に+3.59セン/kWhがかかる計算です。エアコンを日常的に使うコンドミニアム世帯では月600kWhを超える場合があり、その際は請求額の増え方に注意が必要です。
計算例(7月レート+3.59セン/kWhで試算)
- ●800kWh使用 → 3.59セン × 800 = 2,872セン = 約 RM28.72 の上乗せ
- ●1,000kWh使用 → 3.59セン × 1,000 = 3,590セン = 約 RM35.90 の上乗せ
※これはAFA分のみの試算です。実際の請求にはエネルギー料金・容量料金・ネットワーク料金・売上税などが別途加算されます。
今後さらに上がる見通し — 8月以降の予測
TNBが公表した3カ月先の見通しでは、AFAはさらに上昇する見込みです。
- ●8月: +8.33セン/kWh(予測)
- ●8〜10月: おおむね +8.04〜+8.94セン/kWh の範囲(予測)
あくまで予測値で確定ではありませんが、7月の+3.59セン/kWhから倍以上に上がる可能性が示されており、発電コストへの圧力が続いていることがうかがえます。夏場にエアコン使用が増える世帯は、今後数カ月の請求額に注意しておくとよいでしょう。
在住日本人ができる対策
- ●月600kWh以下を意識する—600kWhを超えると全使用量にAFAがかかるため、境界線の手前を意識した節電(設定温度の見直し、不在時のエアコン停止、扇風機併用など)が効果的です。
- ●請求書の「AFA」欄を確認する—従来の「ICPT」に代わって導入された項目で、TNBの明細に月ごとのレートが記載されています。急に高くなった月はここを確認しましょう。
- ●グリーン・エネルギー・タリフ(GET)という選択肢—再生可能エネルギー由来の電力を選ぶGETに加入すると、その分をAFAの対象外にできます。ただしGETは標準料金に一定の割増(契約年数により1kWhあたり3〜5セン程度)が上乗せされるため、AFAが低い月やマイナスの月はかえって割高になる場合があります。損得は月々のAFAレート次第なので、加入前にTNBの公式案内で条件を確認してください。
まとめ
2026年7月のマレーシアの電気代上昇は、燃料価格の上振れを反映したAFA(自動燃料調整費)が+3.59セン/kWhに引き上げられたことが主因です。月600kWh以下なら免除される一方、超えると全使用量に加算されるため、エアコン多用世帯は境界線を意識した使い方が家計を守る鍵になります。8月以降はさらなる上昇が予測されており、当面は請求書の推移に注意しておきましょう。
参考: paultan.org(2026年7月1日、エネルギー委員会の7月AFA設定)、Malay Mail(2026年7月21日、AFA燃料サーチャージ解説)、aq.energy(600kWh超過時の全使用量加算・AFAがICPTを置き換えた経緯)。情報は2026年7月時点のもので、今後のAFAレートはエネルギー委員会(ST)の月次発表により変動します。