リンギット、6月にアジア最下位のパフォーマンス

2026年6月、マレーシア・リンギット(MYR)はアジア通貨の中で最も大きく下落し、市場関係者の間で懸念が広がった。米ドル高の継続と資本流出が重なり、USD/MYR レートは一時 4.1 を超える水準まで上昇(=リンギット安)した。

日本円との関係でも、リンギット安が続くと在マレーシアの日本人が MYR 建てで受け取る給与・資産を円換算した際の価値が目減りするため、日々の家計に直結する問題だ。

BNM が「海外収益の本国還流」促進策を再強化

こうした状況を受け、マレーシア中央銀行(BNM: Bank Negara Malaysia)は 6月24日、リンギット安定化に向けた対策の強化を正式に表明した。

具体的な施策は以下のとおりだ:

  • 政府系企業(GLC)・民間企業が海外で獲得した利益を国内へ送金し、リンギットに転換するよう政府・中央銀行が直接関与して促す
  • 2024年に導入した外貨還流プログラムを復活・拡充し、海外収益をリンギット転換した企業へインセンティブを付与
  • 海外機関投資家からの資本流入を引きつけるための追加施策

BNM がこの方向性を打ち出したのは 2024 年以来2度目で、市場は概ねポジティブに反応した。

BNM 表明後、アジア通貨の中でトップパフォーマーに

6月24日の BNM 表明以降、リンギットはアジア通貨の中で最も強いパフォーマンスを見せた。

7月3日(金)終値の USD/MYR レートは 4.0722。6月中に一時 4.1 を超えた水準から、下落トレンドが反転した格好だ。

市場センチメントを後押ししたもう一つの要因が、機関投資家によるマレーシア国債の大量買いだ:

  • 6月末(6月29日)までにグローバルファンドがマレーシア国債を約 21億米ドル購入
  • これは 2025年5月以来最大の月次流入規模

アナリスト予測:年末は 3.95/USD も

複数のアナリストがリンギットの反発継続を見込んでいる。

カナダ・ロイヤル銀行(RBC)は、USD/MYR が 年末には 3.95 まで回復するとの見通しを示した。Bloomberg が複数のアナリストを対象に集計した予測でも、BNM の施策効果と良好なマクロ経済基盤が評価されている。

背景にある主な要因:

  • マレーシアの経常収支・GDP 成長率などファンダメンタルズが堅調
  • BNM が政策金利を据え置きながら通貨安定に注力するスタンスを継続

在マレーシア日本人の家計への影響

リンギットと日本円(JPY)の動きは、在マレーシアの日本人にとって身近な関心事だ。

リンギット高(円安方向)が進んだ場合:

  • 日本からの送金(円→リンギット転換)では受け取る MYR が減少
  • MYR 建て資産・積立の円換算価値が上昇
  • 将来の日本帰国時に資産を円に戻す際は有利

リンギット安(円高方向)が続いた場合:

  • MYR 建て給与・資産の価値が目減り
  • 日本からの送金では多くの MYR を受け取れる

現在(2026年7月)はリンギット反転局面にあるとみられるため、送金・両替のタイミングを検討している方は、銀行や送金サービス(Wise、SBI Remit など)のレート通知機能を活用し、動向を継続的に確認するとよい。

注意点:回復を阻む要因も残る

一方で、リンギット回復の「壁」も無視できない。

  • 米ドル高の継続リスクFRB の利下げが想定より遅れた場合、ドル高圧力が再燃する可能性がある
  • グローバルリスクオフ地政学的リスクや世界経済の下振れで新興市場通貨全般が再び圧迫される局面もあり得る
  • アナリスト予測は参考値実際のレートはさまざまな要因で変動するため、予測通りに動く保証はない

BNM の施策は中長期的な安定化を目指すものだが、短期的には上下の値動きが続くとみておくのが現実的だ。


本記事は為替・投資のアドバイスを目的としたものではありません。送金・資産運用の判断は各自の責任において行い、必要に応じて金融の専門家にご相談ください。


参考

  • Free Malaysia Today / The Star / The Edge Malaysia「Ringgit may rebound on capital flow measures, say analysts」(2026年7月6日)
  • Bloomberg「Malaysia's Ringgit May Strengthen on Trade Surplus, Bond Demand」(2026年7月6日)
  • VT Markets「Ringgit rises as Bank Negara revives repatriation push, but strong dollar caps gains」(2026年7月)
  • New Straits Times「Bank Negara steps up ringgit defence, economists say recent weakness is correction」(2026年6月)