マレーシアの電子インボイス、免除ラインがRM300万未満へ再引き上げ ― 2026年9月1日発効、対象110万社超

マレーシア内国歳入庁(LHDN)は、電子インボイス(e-Invoicing)制度の導入義務が免除される事業者の年間売上高の基準を、これまでの「RM100万未満」から「RM300万未満」へ引き上げた。アンワル・イブラヒム首相が2026年8月30日、独立記念日(ムルデカ)前夜にプトラジャヤ国際会議センター(PICC)で行った演説の中で発表した生活支援策の一つで、2026年9月1日付で発効した。LHDNは同日付の声明で、この引き上げにより110万社を超える事業者が電子インボイス導入義務を免除される対象になるとしている。

本サイトでは2026年7月、免除ラインが「RM100万未満」に拡大された時点の内容を報じているが、今回はさらにRM300万未満へ引き上げられた形になる。

何が変わったのか

  • 対象: 年間売上高がRM300万未満の中小零細企業(MSME)
  • 内容: 電子インボイス(MyInvoisポータル/MyInvoisアプリ/MyInvois e-POS経由での発行)の導入義務を免除
  • 発効日: 2026年9月1日
  • 発表主体: アンワル首相の演説(2026年8月30日、PICC)を受け、LHDNが同日付の声明で運用開始を確認
  • 対象事業者数: LHDNは「110万社超」が新たに免除の対象になるとしている
  • 制度全体の実績(LHDN声明より): 電子インボイス制度は2024年8月1日に開始しており、これまでに26万5,379の納税者が合計18億4,000万件超の電子インボイスを提出済み

免除の対象外になるケースに注意 ― 「単体の売上高」だけでは判断できない

LHDNの正式ガイドライン「HASiL e-Invoiceガイドライン バージョン4.8」(2026年8月30日公表)に基づく解説記事(advintek社・VATupdate)によると、単体の年間売上高がRM300万未満であっても、次のような資本関係がある場合は免除の対象外になりうる。

  • 個人以外の株主、持株会社、関連会社、ジョイントベンチャーが存在し、それらの年間売上高がRM300万以上ある場合
  • 例: 持株会社の年間売上高がRM2,000万で、その傘下の子会社単体の年間売上高がRM220万にとどまる場合でも、子会社側が免除の対象にならない可能性がある

在住日本人が経営する法人がマレーシアの現地パートナー企業や日本本社の子会社という形態を取っている場合、自社単体の売上高だけでなく、資本関係のある会社の売上高も含めて免除対象かどうかを確認する必要がある。

すでに電子インボイス対応を始めている事業者はどうなるか

RM100万超RM300万未満のレンジで、すでに義務化の適用開始日を迎えて電子インボイスの発行を始めている事業者について、今回改訂されたガイドライン(HASiLガイドラインv4.8)は、義務化の開始日をすでに過ぎた納税者が発行を中止してよいかどうかを明示していない。VATupdateの解説では、LHDNからの正式な明確化が出るまでは、任意継続という形で電子インボイスの発行を続けるほうが無難な対応だとしている。免除対象になったからといって、システムを止めてよいと確定しているわけではない点に注意が必要。

政府の狙いと反応

LHDNは声明で、今回の措置がMSMEのコンプライアンス負担・コストを軽減し、事業の維持・拡大に集中できる余地を持たせることを狙ったものだとしている。あわせて、電子インボイスへの任意参加は引き続き推奨するとし、MyInvoisポータル等の使い方講習やヘルプデスクでの支援は今後も継続するとした。

一方、与党系政党MCA(馬華公会)の経済・中小企業問題委員会委員長で、同党副総裁も務めるローレンス・ロー(Lawrence Low)氏は2026年9月3日、今回の引き上げ自体は歓迎するとしつつ、基準がたびたび事後的に変更される運用のあり方に懸念を示した。業界からの反発が出るたびに制度を修正するのではなく、変更のたびに十分な移行期間や多言語での説明会、資本関係が複雑な企業向けの明確なガイダンスを事前に用意すべきだと述べている。

在住日本人が確認すべきポイント

  • 自社の年間売上高がRM300万未満でも、日本本社や現地パートナーとの資本関係によっては免除対象外になりうるため、税理士・会計士に資本関係を含めて確認する
  • すでに電子インボイスの発行を始めている場合、免除対象になったことを理由に自己判断で中止せず、LHDNの正式な追加ガイダンスを待つ
  • 制度の詳細・最新情報はLHDNのe-Invoiceマイクロサイト、またはe-Invoiceヘルプデスク(03-8682 8000)、MyInvoisライブチャット、メール(myinvois@hasil.gov.my)で確認できる

参考:

  • The Sun(Bernama配信、2026年8月30日)
  • Free Malaysia Today(Faiz Zainudin記者、2026年8月30日。首相演説の施策全体を報じた記事で、e-Invoice免除ラインにも言及)
  • Focus Malaysia(2026年9月3日)
  • VATupdate.com(2026年8月31日)
  • einvoice.advintek.com.my(2026年8月31日時点の記事、HASiL e-Invoiceガイドラインv4.8 [2026年8月30日公表] 引用)