2026年6月1日、就労ビザ(EP)の最低給与が引き上げに

マレーシアで働く外国人にとって最も身近な就労ビザ「Employment Pass(EP/雇用パス)」の最低給与要件が、2026年6月1日から引き上げられました。マレーシア内務省(MOHA)が2026年1月に発表し、駐在員サービス課(ESD: Expatriate Services Division)も同様の通知を出しています。日本からの現地採用・駐在・転職を考えている人に直接関わる改定なので、要点を整理します。

新しい最低給与(カテゴリー別)

EPは月額の基本給によって3つのカテゴリーに分かれています。今回の改定で、各カテゴリーの基準額が次のように変わりました(金額はマレーシア・リンギット=RM)。

カテゴリー改定前改定後(2026年6月1日〜)
EP カテゴリーIRM10,000以上RM20,000以上
EP カテゴリーIIRM5,000〜9,999RM10,000〜19,999
EP カテゴリーIIIRM3,000〜4,999RM5,000〜9,999
  • カテゴリーIIIの製造業については、別途 RM7,000〜9,999 という基準が示されています。
  • 基準となるのは原則として基本給(basic salary)で、各種手当やボーナスは含まれない、という説明が複数の専門家筋から出ています。手当込みでぎりぎり届く、という考え方は通用しない可能性が高い点に注意が必要です。

最も身近なカテゴリーIIIの下限が RM5,000 になったことで、これまで RM3,000〜5,000 帯で現地採用されていた層が新基準では申請できなくなる、という影響が指摘されています。

有効期間(更新可能年数)も変更

給与だけでなく、各パスの有効期間にも変更が入りました(出典により整理)。

  • EP カテゴリーI・IIこれまでの定めから、最長10年を上限とする運用へ。
  • EP カテゴリーIII最長5年へ(一部の専門家解説は従来の上限を3年と整理)。
  • カテゴリーIIIでは、これまで認められていなかった帯同家族(dependents)の同伴が認められる方向の変更も一部出典が報じています(I・IIは従来通り)。この2点は出典がまだ限られるため、確定的な取り扱いは個別確認が前提です。

いつから・誰に適用されるのか

複数の出典が一致して伝えているのは次の点です。

  • 2026年6月1日以降に提出される新規申請・更新申請が、新しい最低給与要件の対象になります。
  • 改定前に取得済みのEPで働いている人は、その有効期間内は従来の条件のまま働き続けられる、という整理が一般的です。ただし更新のタイミングで新基準が適用されるため、次回更新時に給与が新しい下限に届いているかが論点になります。

なお、改定の発表主体や適用範囲については出典によってニュアンスがあります。内務省(MOHA)・ESDからの通知として「EP申請全般」を対象とする説明がある一方、Baker McKenzie はマレーシアデジタル経済公社(MDEC)登録企業向けの案内として整理しており、ESD経由の非MDEC案件について同様の引き上げが明示されていないと注記しています。自分の勤務先・申請ルート(ESD経由かMDEC経由か)でどの基準が適用されるかは、必ず勤務先の人事・移民専門家に確認してください。

在住者・これから移住する人への影響

今回の改定は、マレーシア政府が掲げる第13次マレーシア計画(RMK-13)の方針に沿ったもので、外国人材を「より高度・高給な人材」に絞っていく流れの一環と説明されています。日本人にとっての実務的なポイントは次の通りです。

  • これから現地採用を狙う人オファー額が新しいカテゴリー下限(特にIIIのRM5,000)に届くかが、ビザ取得可否を左右します。
  • すでにEPで在住している人当面は現状維持でも、次回更新時の給与水準が鍵になります。早めに勤務先と更新方針をすり合わせておくと安心です。
  • 帯同家族がいる世帯カテゴリーIIIで家族帯同が認められる方向の変更は前向きな材料ですが、確定的な取り扱いは申請ルートにより異なり得るため、個別確認が前提です。

まとめ

  • EPの最低給与が2026年6月1日から引き上げ(I: RM20,000、II: RM10,000、III: RM5,000が下限)。
  • 基準は基本給ベース、手当・ボーナスは原則対象外との説明。
  • 有効期間にも上限(I・II最長10年、III最長5年)が設定。
  • 適用は6月1日以降の新規・更新申請。既存保有者は更新時に新基準が論点に。

本記事は公開情報に基づく一般的な整理であり、個別のビザ申請の可否を保証するものではありません。最新の正式要件と自分のケースへの当てはめは、必ず勤務先・移民法務の専門家に確認してください。


参考(2026年6月時点):

  • マレーシア入国管理局(Immigration Department / ESD)公式告示(imi.gov.my)
  • KPMG「GMS Flash Alert」(2026年・EP最低給与改定)
  • Baker McKenzie「Malaysia: Increase in Employment Pass Salary Requirements」(2026年1月)
  • Erickson Immigration Group「Malaysia Revises Minimum Salary for Employment Pass Applications Effective June 1, 2026」
  • aJobThing / EY Japan / Fragomen / Rödl & Partner / InCorp Malaysia 各社の解説(2026年)