概要

ジョホール州フォレストシティで運営されていた海外起業家・エンジニア向けの共同生活コミュニティ「Network School(ネットワーク・スクール)」が、2026年7月22日付で営業を停止した。運営元であるNSO Malaysia Sdn Bhdの事業ライセンスが地元自治体に取り消され、施設は立入禁止措置がとられ、封鎖(封印)された。フォレストシティは以前から日本人を含む在住外国人の間で「シンガポール通勤圏の新しい居住地」として注目されてきたエリアであり、同じ開発区内で起きたこの一件は、外国資本のコミュニティ型事業がマレーシアでどこまで規制対象になり得るかを示す事例として、在住者にとっても無関係ではない。

Network Schoolとは

Network Schoolは、暗号資産取引所Coinbaseの元CTOで投資家のバラジ・スリニヴァサン氏が2024年10月にマレーシアで立ち上げた、起業家・エンジニア・研究者向けの共同生活・共同就労コミュニティ。月額1,500ドルからの会費で、相部屋の住居・食事・ジム利用などが提供されていたと報じられている。

発端はSNSでの指摘

問題の発端は、Network Schoolの参加者の中にイスラエル国籍者が他国のパスポートを使って加わっているのではないか、とSNS上で指摘されたことだった。なお一般的な背景として、マレーシアはイスラエルと外交関係を持たず、イスラエル旅券保持者の入国には特別な許可が必要とされる。この指摘を受け、移民局が調査に乗り出した。

移民局長ダトゥ・ザカリア・シャアバン氏は7月21日、Network Schoolに関連する外国人430人を特定したと発表した。内訳は、マレーシア国内に滞在中の者が210人、既に出国済みの者が201人、所在が確認できていない者が19人という。

一方でザカリア氏は同じ会見で、Network Schoolに関係する外国人379人を2度にわたって調査した結果、現時点で不正の証拠は見つかっていないと明言している。SNS上で指摘された二重旅券の使用についても、検査した範囲では確認されなかったとした。所在が確認できていない19人については「国外へ不法に出国した可能性がある」と述べ、追跡を続けているとしている。また別途、40か国・266人の外国人を検査したところ、当時の記録上はいずれも有効な入国書類を保持していたと報じられている。

つまり、営業ライセンス取り消しは市議会による事業免許上の措置であり、少なくとも現時点で移民法違反が認定された結果ではない。

事業ライセンス取り消しの経緯

イスカンダル・プトリ市議会(MBIP)は複数回の立入検査と特別全体会議(7月21日)を経て、NSO Malaysia Sdn Bhdの事業ライセンスおよび広告ライセンスを取り消す決定を下した。指摘された違反点は次の通りとされる。

  • 施設内の1ユニットが有効な事業ライセンスを持たずに使用されていた
  • もう1ユニットでは、許可されていた「オフィス用途」のライセンス範囲を超える事業活動が行われていた
  • 掲示されていた看板が広告ライセンスの内容と一致していなかった

MBIPはこの決定に基づき、7月22日をもって全事業活動の停止を命令。同日、MBIPの2018年商業・事業・工業ライセンス条例 第49条(2)(By-law 49(2) of MBIP's Trade, Business and Industrial Licensing By-laws 2018)に基づいて施設を正式に封鎖した。あわせて、マレーシア・デジタル経済公社(MDEC)もNSO Malaysia Sdn Bhdに付与していた「Malaysia Digital」ステータスの取り消し手続きに着手したと報じられている。

双方の反応

ジョホール州のオン・ハフィズ・ガジ州首相(メンテリ・ブサール)は、投資家・企業・団体であっても国の法律の上に立つことはできない、との趣旨の立場を示したと報じられている。

一方、創業者のスリニヴァサン氏は、コワーキングスペースが2つのユニットを結合したもので片側しか適正にライセンスを取得していなかったことを認めつつ、今回指摘された点はいずれも是正可能な技術的問題であるとの見方を示したと報じられている。同氏はまた、こうした対応が国際的なテック企業・起業家・投資家を呼び込もうとするマレーシアの取り組みに悪影響を及ぼしかねない、との懸念を示した。なお同氏は7月18日の時点では閉鎖情報を「フェイクニュース」だと主張していたが、その3日後にライセンス取り消しが正式発表される形となった。

ライセンス取り消しの発表直後にあたる7月22日、スリニヴァサン氏はカザフスタン共和国の人工知能・デジタル発展省との間で覚書(MoU)を締結したと発表した。同氏は新拠点について、迅速なビザ発給や事業再登録手続きの簡素化、人材採用の後押しなどが得られるとの見通しを示している。

在住日本人が知っておきたいこと

  • フォレストシティ自体の都市開発計画とNetwork Schoolの一件は別の事案であり、開発区全体が閉鎖されたわけではない。
  • 今回のライセンス取り消しは、施設の使用用途・広告表示など事業免許まわりの違反が直接の理由とされており、コミューン形式の事業でも通常の商業施設と同様に、用途に合ったライセンスの取得・遵守が厳格に求められることを改めて示した形。移民局の調査では現時点で不正の証拠は見つかっておらず、免許問題とは別トラックである点に注意したい。
  • 移民局の調査は現在も一部関係者の所在確認が続いている段階であり、続報が出る可能性がある。

参考: Free Malaysia Today(2026年7月21・22日)、Lowyat.NET(2026年7月22日)、ExpatGo(2026年7月23日)、TNGlobal / technode.global(2026年7月22日)、Malay Mail(2026年7月21日)、The Star(2026年7月21日)、The Vibes(2026年7月22日)を基に作成。情報時点は2026年7月23日。