2026年8月15日(土)の夜から16日(日)の未明にかけて、マレーシア国内で約5時間半のうちに2回、地震の揺れが観測されました。1回目は半島部西海岸のペナン州・ペラ州、2回目はボルネオ島のサバ州です。いずれもマレーシア気象局(MetMalaysia)は津波の恐れはないとしており、被害・負傷者の報告もありません。
ただ、コンドミニアムの高層階に住む在住日本人にとっては「マレーシアでも揺れることがある」と実感する出来事でした。何が起きたのか、なぜマレーシアが揺れるのか、そして揺れたときにどうすればよいのかを、公的機関の発表ベースで整理します。
1回目:8月15日午後6時54分、スマトラ島北部の地震
マレーシア気象局によると、震源はインドネシア・スマトラ島北部、北緯2.9度・東経98.8度で、プマタンシアンタール(Pematangsiantar)の南西約37キロ。震源の深さは154キロ、規模はM6.4でした。発生は現地時間15日午後6時54分です。
気象局は「半島マレーシア西海岸の一部で揺れが感じられた」とし、マレーシアへの津波の恐れはないと発表しました。
揺れが報告された主な地域は次のとおりです。
- ●ペナン州—ジョージタウン、ジェルトン、タンジュン・ブンガ、バヤン・バル、バトゥ・フェリンギ、アイル・イタム、スンガイ・バル、およびスブラン・プライ側(プライ、バガン、ブキット・メルタジャム、クパラ・バタス、ベルタムなど)
- ●ペラ州—クアラ・カンサー、アロー・ポンス、バガン・セライ、テルック・インタン、ウル・キンタ、メル、イポー
国営通信ベルナマは、揺れが2〜3分続いたと伝えています。ペナン州消防救助局には9件の通報が入りましたが、点検の結果、建物の損壊や負傷者はありませんでした。ペラ州消防救助局には、記事掲載時点では通報は入っていませんでした。
今回報じられた揺れの報告はペナン州とペラ州に集中しており、クランバレー(クアラルンプール周辺)からの報告は主要各紙の記事には出ていません。
報道によってマグニチュードが違うのはなぜか
この地震については、機関によって発表値が異なります。在住日本人が複数のメディアを見比べると混乱しやすいポイントなので、整理しておきます。
- ●マレーシア気象局(MetMalaysia)—M6.4/深さ154km/プマタンシアンタールの南西37km
- ●インドネシア気象気候地球物理庁(BMKG)—深さ168km/シマルングンの南東約11km(陸域)
- ●米地質調査所(USGS)—M6.9/深さ約172km/プマタンシアンタールの北北西15km
震源が深い地震では、各国の観測網が使うデータや解析手法の違いによってこうした差が出ます。どれかが「間違い」というわけではありません。 マレーシア国内の避難・警報の判断はマレーシア気象局の値が基準になりますので、居住地の対応を考えるときは気象局の発表を見るのが確実です。
2回目:8月16日午前0時25分、スラウェシ島の地震でサバ州が揺れる
その約5時間半後、16日午前0時25分にインドネシア・スラウェシ島のミナハサ半島でM6.1の地震が発生しました。震源は南緯0.1度・東経120.6度、パルの北東約116キロ、深さ10キロです。
マレーシア気象局は、サバ州のタワウ、ラハ・ダトゥ、センポルナで揺れが感じられたとし、こちらもマレーシアへの津波の恐れはないとしています。被害の報告はありません。
同じ日、フローレス島ではM7.7で少なくとも47人が死亡
なお、15日の早朝(午前5時58分・現地時間)には、インドネシア東部フローレス島沖でM7.7の地震が起きています。震源は東ヌサ・トゥンガラ州エンデの北北西約68キロ、深さ10キロ。
アルジャジーラの15日時点の報道では、少なくとも47人が死亡し、住宅157棟が全壊、約200棟が損壊。余震は同日中に230回を超え、最大でM6.2に達しました。津波警報は一時発表され、その後解除されています。死者数は捜索の進展とともに増える見通しとされており、報道機関によって集計時点が異なる点にご注意ください。
この地震はマレーシアからは遠く、マレーシアでの揺れは報じられていません。ただ「8月15日はインドネシア各地で地震が相次いだ日だった」という文脈は押さえておくと、ニュースを追いやすくなります。
なぜ「地震が少ない国」のマレーシアが揺れるのか
マレーシア気象局の解説ページによると、マレーシアは2つの大きなプレート境界のあいだに位置しています。西側にインド・オーストラリアプレートとユーラシアプレートの境界、東側にユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界があります。
その結果、次のような揺れを受けます。
- ●半島マレーシア西海岸—スマトラ島やアンダマン海で起きた大きな地震の揺れが届く
- ●東マレーシア(サバ・サラワク)—フィリピン南部や北スラウェシの地震の揺れが届く
- ●国内の活断層による地震—半島部ではブキット・ティンギ、ジェランタット、クアラ・ピラなどで観測されている
建設産業開発庁(CIDB)の解説記事は、マレーシア自体は比較的安定したスンダプレート上にあり、地震リスクの主な発生源は隣国インドネシアやフィリピンの断層だと整理しています。国内で最もリスクが高いのはサバ州で、2015年のラナウ地震(M6.0)では61棟の建物が被害を受けました。半島マレーシアとサラワクでは、モーメントマグニチュード5未満の小さな地震が記録されています。
7月にはクアラルンプール周辺でも揺れていた
今回はペナン・ペラでしたが、クランバレーが揺れた例も同じ2026年にあります。
2026年7月22日午後0時18分、スマトラ島北部・ランサの南西55キロ、深さ10キロを震源とするM5.7の地震が発生し、ペタリンジャヤ、カジャン、プチョン、クラン、スラヤンの住民が揺れを感じたと報告しました。消防・救助隊はバンダー・タシック・スラタンの施設、カジャン市議会の建物、スバンジャヤのINTIカレッジの3棟を点検しましたが、負傷者や構造的な被害は報告されていません。
つまり、KL周辺の高層コンドミニアムに住んでいても「一生揺れを感じない」とは限りません。
建物の耐震はどうなっているか
マレーシアは2017年に、欧州基準ユーロコード8のマレーシア国内附属書「MS EN 1998-1:2015」を整備し、耐震設計の国内規格を持っています。
一方でCIDBの解説記事は、既存建物の耐震補強(レトロフィット)が広く推奨されてはいるものの、コストと執行面のギャップから実際の採用は限定的だ、と指摘しています。新築と既存建物では事情が異なる点は認識しておいたほうがよいでしょう。
なお、個々のコンドミニアムがどの基準で設計されているかは物件ごとに異なります。気になる場合は、管理事務所やデベロッパーに設計年次と適用基準を確認するのが確実です。
揺れたときにどうするか — マレーシア気象局の公式ガイド
マレーシア気象局が公開している一般向けガイドの要点です。日本の防災指針と重なる部分が多いものの、「高層階では出口に殺到しない」「エレベーターは絶対に使わない」は、高層コンドミニアムが多いマレーシアの居住環境では特に重要です。
屋内にいるとき
- ●丈夫なテーブルや机、ベンチの下に隠れる。あるいは戸口や部屋の隅で身を支える
- ●窓、本、キャビネット、重い鏡から離れる
- ●ろうそく、マッチなどの裸火を使わない
高層ビルにいるとき
- ●机など重い家具の下に入る
- ●窓から離れる
- ●出口に殺到しない
- ●エレベーターは絶対に使わない
- ●建物内の同じ階にとどまる
屋外にいるとき
- ●電線、電柱、樹木、高い建物、壁、街灯柱から離れ、慎重に開けた場所へ移動する
- ●落下した電線には近づかない
- ●揺れが収まるまで開けた場所にとどまる
揺れが収まったあと
- ●ラジオやテレビをつけて最新の緊急情報を確認する
- ●余震に備える
- ●救助要請以外で電話を使わない
情報の確認先
- ●マレーシア気象局(MetMalaysia)公式サイト—https://www.met.gov.my/ — サイトの「Earthquake」メニューから地震専用ポータル `mygempa.met.gov.my` にリンクしています
- ●公式アプリ—myCuaca
- ●公式SNS—Facebook / X(旧Twitter)/ Instagram / YouTube / TikTok の各 metmalaysia アカウント
- ●ホットライン—1-300-22-1638
警報の発表は「8分→6分」へ短縮の方針
2026年1月26日、政府は国会で、マレーシア気象局が地震・津波情報の発表にかかる時間を現在の8分から6分に短縮することを2026年から進めると説明しました。所管は天然資源・環境持続可能性省(NRES)です。第13次マレーシア計画(13MP)のもとで国家津波早期警報システムの開発に1,800万リンギが充てられます。これとは別に、気象警報システム全体の高度化(新型レーダーや予報プロジェクトを含む)に2億4,200万リンギが配分されています。
まとめ
- ●2026年8月15日夜のM6.4(気象局発表)でペナン州・ペラ州が、16日未明のM6.1でサバ州が揺れた。いずれも津波の恐れなし、被害・負傷者の報告なし
- ●マレーシアはスンダプレート上にあり自国の大地震は少ないが、インドネシア・フィリピンの地震の揺れは届く。2026年7月22日にはクランバレーでも揺れが報告された
- ●高層階では出口に殺到せず、エレベーターを使わないのが公式ガイドの要点
- ●情報はマレーシア気象局が基準。機関ごとにマグニチュードの発表値が異なることがある
参考: BERNAMA、Free Malaysia Today、マレーシア気象局(MetMalaysia)公式サイト、米地質調査所(USGS)地震カタログ、Al Jazeera、CIDB SMART、マレーシア規格局(Department of Standards Malaysia)(情報は2026年8月16日時点)。